曲芸ドラマー ソニー・ペインの話

素晴らしき曲芸師

ドラマーを誉める時、「良くあんなに両手両足がバラバラに動きますね」

と言う人がいる。確かにドラマーでは無い人から見ると、

驚くべき事なのだろう。では、そのドラムを叩きながら

曲芸をやっているのを見たら、その人は正気を失うのではないか。

*

そんなドラマーがかつて居たのだ。

その人の名はソニー・ペイン。

*

彼が在籍したカウント・ベイシー楽団を素晴らしい演奏とその曲芸で

おおいに盛り上げたのだ。勿論、歴代のカウント・ベイシー楽団に

在籍した名ドラマー達と比べると異色な存在だった事は言うまでもない。

*

どんな曲芸をやったかというと、まあ、演奏しながらであるから、

まさか突然海老一染之助・染太郎の様に傘と升を取り出して

いつもより余計に回すという訳にはいかないが、

とにかくドラムスティックを回す、投げる、お手玉する、

肩に乗せては反対の手で取る、股の下をくぐらせる、などなど・・

これを、きちんとリズムを刻みながらやるのだ。

僕が見たのは無論ビデオだが、最初は目を疑った。

なんじゃこりゃ!がこれは凄い、に変わり、最後は感動した。

無論、凄いのは曲芸だけではない。この人のここ一番の一発の

インパクトの凄さは他に聴いた事が無い。

それを聴いたが最後、その音圧で衝撃波でも食らったがごとく、

我が身を遥か後方へ追いやられてしまうだろう。

*

大体ドラマーであれば、アクロバットの類いは皆好きなはずだ。

僕が言うんだから間違いない(笑)

でも何故皆やらないかというと、そんな事やる暇があったら

もっと他にやる事があるだろ!とか言って怒られるからだ(笑)

だって、もしもこのソニー・ペインの様な事をそつなく

やれるようになろうとすると、それはもう、ひとつの楽器をマスター

するのと同じくらいの労力がかかる。(だから凄いんだが・・)

故に楽器の方の練習が忙しくて、なかなかそっちの練習に

とりかかれないという訳だ(笑)

*

なのに、ソニー・ペインはそれをやった。

周りからは初めはさぞかしいろんな事を言われただろう。

そんな馬鹿げた事はやめろ、とかね。

いや、普通は絶対やらない(笑)。では、彼は何故やったのか。

ここに大きな意味があるのだと僕は思う。

*

彼は、エンターテイメント、つまり人の前に出て何かをやって

喜んでもらうという事の本当の意味を知っていたんだと思う。

だって、そうでも無ければ練習してる最中にふと、こんな練習

より、もっと違う練習しよ・・と思うはずだもん(笑)

ただ奇を衒ってとか、目立ちたいとかいうだけの理由ではとてもとても、

あんな芸当をマスターするだけの努力なんか出来っこ無い(笑)

よく、他の楽器のプレイヤーに、ドラマーは目立ちたがり屋が多いとか

言われるけど、あれはそれなりに考えがあっての事なのですよ(笑)

まあそれはさておき、問題は人の心、って事ですかね・・

あのバディ・リッチもそういった要素を持ってるし、いろんな意味で

一流の人達は芸達者な人が多い。

*

そういうわけで、僕はこのソニー・ペインが大好きだ。音楽で得る感動

とはまた違った夢や希望を、音楽と同時にもらった。

*

こんな素敵な事があるでしょうか・・・

☆☆☆

注:写真と記事は関係ありません

ロイ・ヘインズ|エルビン・ジョーンズ

ホームへもどる